心理学的成因仮説

心理学的仮説もそのひとつです。たとえば次の3つの性格が挙げられています:。

病前性格、つまり発症前の本人の性格がうつ病にかかりやすくしているという仮説です。

心理学的仮説の主なものに、病全性格論があります。

なぜうつ病を発症するのか、を説明する成因仮説としては、生物学的仮説や美認知行動の立場からなど、さまざまな仮説が唱えられています。

●メランコリー親和型性格
●執着性格
●循環性格

循環性格

クレッチマーが提唱する性格です。社交的で親切、しかも温厚な性格です。しかしその反面、優柔不断で決断力に乏しいために、社会のさまざまな場面で板ばさみにあいます。躁うつ病の病前性格のひとつではないか、といわれます。

ただし、うつ病の概念や、社会状況は変化するのなか、実際にはこのような性格に該当しない人たちのなかにもうつ病を発症する人が増加しています。したがってこのような性格を持っているというだけではすべてのうつ病の発症を説明できないことは明らかでしょう。

メランコリー親和型性格

ドイツの精神科医テレンバッハが提唱する性格です。秩序を重んじ、几帳面で律儀であり、生真面目、融通が利かない、という特徴を持ちます。この性格の持ち主は、反復性のないうつ病を呈するといわれます。

執着性格

日本の下田光造が提唱した性格です。仕事熱心で几帳面、責任感が強いなどの特徴を持ちます。このような病前性格を持つ場合、反復性のうつ病、または躁うつ病を発症する可能性が高いとされます。

日本における箱庭療法

1985年には国際箱庭療法学会が設立されました。日本には古くから箱庭で遊ぶ文化がありました。もともと「砂遊び療法」といわれていたのを、「箱庭療法」と名称したのは河合隼雄です。お盆の上に石を置き、風景を作る盆石や、盆山・盆景です。

江戸時代末期から明治初期にかけて多くの流派があったといいます。子どものうつ病治療として、三環系抗うつ薬の投薬治療に並行して推奨されているのが箱庭療法や遊戯療法などの心理療法です。日本では、日本箱庭療法学会があります。

盆石遊びというのは、その遊びを通して事故を表現する方法だったのです。中間子論の提唱など、原子核・素粒子物理学の発展に大きな功績をあげ、日本人初のノーベル賞受賞者となった湯川秀樹は、幼い頃、盆石遊びをして「自分の世界を作っていた」といいます。箱庭療法は英国で発表されて以来、欧米・ヨーロッパで広く用いられていますが、実際、欧米と比較して非言語的表現の多い日本の文化においてこのような自己表現方法は適しているといえるかもしれません。

現在では、学校や病院でのカウンセリンググループや、心理療法一般、さらに少年鑑別所などの機関で箱庭療法は活用され、急速に発展、普及し、日本独自の展開をしめしています。日本では箱庭療法は河合隼雄が1965年に紹介しました。このような古くからの遊びや風習が現在の日本の精神治療における箱庭療法の土台となっているのでしょう。

治療の判断

内因性うつ病は、気持ちのもちようで変えられるものではないからです。一方、心理的葛藤に起因すると思われる心因性うつ病の場合は、その原因となった葛藤を解決し、環境を改善するなどの対応が必要です。場合によってはその誘因を取り除くとたちまち症状が改善することもあるのです。

精神科医の助言に従うことが大切です。また、入院するのか、それとも外来で治療を進めていくかの選択は、症状の重症度の判断が重要です。心理的葛藤に起因しない内因性うつ病の場合、治療方針は一般の病気と同様で、病気であることを本人と家族が認識し、気持ちをゆったりもって養生し、薬を飲んで快復に努めることが大切です。

特に、本人に希死年慮や自己否定傾向が強い場合には、家族や周囲の人たちが速やかに本人に、専門の医師の受診をさせることが重要となります。うつ病は単なる心の風邪として軽くみることはできません。

内因性うつ病の場合は、その重症度にかかわらず薬物療法がとらえます。ただし、そのうつ病が内因性のものか、心因性のものかを判断するのはかなり難しいのが現状です。

うつ病は、DSMによる客観的な分類からはその症状の程度からは、
●「大うつ病」(ある程度症状の重いうつ病)と、
●「気分変調症」(軽いうつ状態が続く状態)のふたつに分類されます。
一方、臨床の場面ではその成因から
●「内因性うつ病」(心理的誘因が明確でないもの)と、
●「心因性うつ病」(心理的誘因が特定できるもの)に分けられます。

治療の選択

主なものには次のものがあります。しかし現在では、さまざまな治療法が確立されつつあります。

かつてうつ病の治療といえば、電気けいれん療法しかその効果が証明される治療法はありませんでした。

●薬物療法
臨床的に、うつ病に対する抗うつ薬の有効性は科学的に実証されています。ただし、即効的ではないことから、1週間?3週間の継続的な服用が必要となります。

●認知行動療法
認知行動療法というのは、外界の環境をどのように認識するかによって感情や気分をコントロールしようという治療法です。抑うつ的な気分の背後にある認知のゆがみを自覚し、是正することを目的とします。

●精神療法
いわゆる「カウンセリング」と言われるものです。

●電気けいれん療法(ECT)
電気けいれん療法というのは、頭皮の上から電流を通電し、人工的にけいれんを起こす事で治療を行うものです。近年、薬物療法が発展し、その効果が認められつつありますが、薬物療法の場合、その効果が現れるまでに1週間から3週間ほど服用を継続する必要があります。また、実際、効果が認められない場合もあります。そのような無効な場合や自殺の危険が切迫している場合などには、即効性のある電気けいれん療法が行われることになります。有効性・安全性ともに高い治療法であることから、保険診療でも認められています。

●経頭蓋磁気刺激(TMS)
経頭蓋磁気刺激は、頭の外側から磁気パルスを当てることで脳内に局所的な電流を生じさせ、脳機能の活性化を図る治療法です。ただし、保険は未承認です。

その他、実験的段階にあるものや、限定的に行われる治療法として、
●断眠療法
●光療法
●運動療法
●音楽療法
などが行われます。

箱庭による自己表現

彼は、日本に箱庭療法を紹介した河合隼雄の発表を聞き、箱庭に用いられている枠に着目しました。中井の風景構成法とは、紙の縁を枠と考え、治療者が枠を手書きで描くというもので、彼はこの方法の「枠付け法」に箱庭療法を応用したのです。子どもたちの場合は言語表現が未発達ですし、大人といえども、無意識の世界は心の奥に存在しており、自分でも気づいていないことがたくさんあるのです。

非言語的自己表現を主とする日本において、表現療法としての箱庭療法は特にその価値が重要であると思われます。そもそも箱庭療法はうつ病体験を言語化することが困難、あるいは発達段階によっては不可能な子どもを対象としたものでしたが、現在では成人の精神病治療にも広く活用されています。箱庭には「枠」があるがゆえに、患者は自己表現が可能であり、それゆえに治療効果があるとしたのです。

特に、12歳未満の児童期〜12歳から17歳の思春期におけるうつ病の治療法として、薬物療法と並んで注目されているのが、箱庭療法と遊戯療法です。統合失調症の治療で著名な精神科医である中井久夫は、日本独自の風景構成法を考案しました。中井はこの高さ7cmの枠があることの重要性に注目したのです。

箱庭療法に用いられているのは、縦57cm×横72cm×高さ7cmの箱です。人は自分の考えや気持ち、状況を言葉で十部に表現することが難しいことがあります。そのため、言葉以外の方法、たとえば絵画、箱庭、粘土、遊戯などを通してそのような無意識の世界を表現することが重要とされ、また治療効果が期待されているのです。

心理療法

主な心理療法としては次のものがあります。精神分析、行動療法、来談者中心心理療法の3つが心理療法の源流とされますが、実際には他にもさまざまな学派が存在します。心理療法を行うのはカウンセラー、セラピスト、治療者と呼ばれ、心理療法を受ける人はクライエント、患者、来談者といわれます。

心理療法というのは、うつ病や統合失調症などの精神疾患の治療や心理的問題の解決、また精神的健康の維持と増進を目的とする理論や技法の体系のことです。いずれも精神疾患の診断、治療、研究を行います。

うつ病の治療には、三環系抗うつ薬などの投薬治療(薬物療法)とともに、心理療法を併用して行くことが重要であり、また効果があるとされます。臨床心理学の分野では心理療法と呼ばれ、精神医学の分野においては精神療法と呼ばれることがありますが、実際のところ同じものをさすといえます。

臨床心理学というのは、心理学の一分野です。一方、精神医学というのは、医学の一分野です。

●精神分析(力動的心理学・深層心理学)
●行動療法
●来談者中心療法
●フォーカシング
●イメージ療法
●認知療法
●理性感情行動療法(論理療法)
●集団療法
●グループ・アプローチ
●家族療法
●カップル・セラピー
●クリエイティヴ・セラピー
●ナラティブ・セラピー
●短期療法
●遊戯療法
●箱庭療法
●コラージュ療法
●ゲシュタルト療法
●交流分析
●森田療法
●内観療法
●臨床動作法
●自律訓練法
●催眠療法
●エネルギー療法
●グリーフ・セラピー
●プライマル・スクリーム
●絵画療法(例…ライフシンボル)
●回想法

根拠に基づいた医療

なるべく客観的な疫学的観察や実験を根拠とし、患者といっしょに治療方針を決定していくことを目指すものです。これは他の医学領域では可能でも、精神科領域では困難なことが多いのが実際です。治療介入とその結果の因果関係を明確にし、治療介入を行うことの有効性を評価していくのです。

現在、医学の分野で問題となっていることに「根拠に基づいた医療」ということがあります。精神医学の分野においても、この「根拠に基づいた医療」の重要性が着目されています。ただし、評価の元になる結果は、数値で表すことのできる生体データが主となります。

うつ病の評価に用いられる評価尺度としては次のものがあります:。そのため重症度を評価する評価スケールの点数や、自殺の有無、入院期間を治療結果を示す客観的データとして用いています。

理論や経験、あるいは権威者の判断に頼っていた従来の医学を反省し、治療効果、副作用、予後の予測などの臨床現場における疑問について考えていくというものです。「根拠に基づいた医療」EBM:evidence-based medicineとは、「良心的に、明確に、分別を持って、最新最良の医学知見を用いる」conscientiousmexplicit,and judicious,use of current best evidence 医療のあり方をさします。

●ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)
●ベックうつ評価尺度(BDI)
●モンゴメリー・アズバーグうつ病評価尺度(MADRS)など

また、現在精神医学で行われている治療法には次のものがあります:

●脳に直接作用する治療
薬物療法、電気けいれん療法、経頭蓋磁気刺激、光療法、断眠療法、脳深部刺激療法
●言語のやり取りを主とする治療
来談者中心療法、精神分析療法、家族療法、集団精神療法、認知療法、心理教育など
●非言語的なやり取りを主とする治療
作業療法、自律訓練法、動作法など
●社会的な治療
家庭環境や職場環境の調整、ジョブコーチ、訪問看護、デイケア、自助グループ(断酒会)など

うつ状態の分類

うつ病あるいはうつ状態の分類としては、1:うつ状態そのものから分類する方法、と2:経過から分類する方法があります。

1.うつ状態そのものから分類する方法には、大きくわけて(1)症状の重症度から区分する分類、と(2)うつ病の成因から分類する方法があります。

(1)症状の重症度による区分

アメリカの操作的診断基準、DSM(精神疾患の分類と診断の手引き)の?維持以降(現在はIV)、米国精神医学会はうつ病分類として、
●「ある程度症状の重い大うつ病」と
●「軽いうつ状態が続く気分変調症」に、うつ病性障害を2分しています。

(2)うつ病の成因からの区分

これは古典的な分類です。
●「心理的誘因が明確でない内因性うつ病」(狭義の「うつ病」)と、
●「心理的誘因が特定できる心因性うつ病」(狭義の「適応障害」)の2分法です。

重症度という症状のみで判断するDSM(精神疾患の分類と診断の手引き)などの分類は、客観的であることから研究には適しています。ただし、臨床現場においてはなぜうつ病になったのか、という心理的誘因の評価を欠かすことはできません。こちらのほうが治療を進めていくうえでは大切といえるかもしれません。なぜなら、心理的誘因が特定できる場合(心因性うつ病)、環境を改善するなど、その原因を取り除けばたちまち元気になれる可能性があるからです。

(2)は古典的分類とされ、現在では(1)が主流ですが、現在の病状を改善するためには何をしたらいいのか、何をすることができるのかを明らかにし、症状を完全に撤去、あるいはそれとうまく付き合っていくようにするのが治療において大切になってくるのではないかと思います。

箱庭療法の行い方

うつ病をもつ子ども(12歳未満の児童期と12歳から17歳までの思春期の子どもたち)が増えているなか、三環系抗うつ薬の投薬治療に並行して重視され、またその効果が期待されているのが箱庭療法や遊戯療法などの心理療法です。ミニチュアのおもちゃ(さまざまな建物、人、動物、乗り物、木など)や、石、貝殻、ビー玉、そのほか怪獣などがあることもあります。たとえば、砂の上に貝殻を置き、葉っぱで飾る、その上に草花を一面に並べる、というとき、最初の貝殻は死んだ世界、死・抑うつ・無気力を表し、その上を覆う花々は、華やかな外見の姿を示すとされます。

箱庭を作ることは、カウンセラーにとっては、解釈の手がかりとなる一方、クライエントにとっては自己表現療法となり、自己治癒力としての働きを担うとされます。表面と内面の落差を示していると解釈されます。箱のなかには砂が入っており、箱庭療法を行う部屋にはセラピストが用意したさまざまな道具類があります。

箱庭療法に用いられるのは、箱(縦57cm×横72cm×高さ7cm)です。このような箱庭療法は何度か繰り返され、ゆっくりとその回復を促していきます。箱庭療法は具体的には次のような手順で行われます。

クライエントは、部屋に用意されたさまざまなおもちゃなどを見回し、自分の世界を表現するのにぴったりと思われるものを選びます。カウンセラーが見守るなか、クライエントはこれらの道具を用いて、箱のなかに自由に「何か」を作っていきます。カウンセラーは、こうして作られたものを、出来上がった箱庭が伝えるメッセージ、箱庭の変化などを、クライエントの内的世界を知る手がかりとしていくのです。

長期経過によるうつ病分類

うつ病の長期経過による分類:
●躁うつ病
●反復うつ病
●単一エピソードうつ病

躁うつ病


反復性うつ病と呼ばれます。別名、双極性障害、または双極性感情障害と呼ばれます。双極性障害の生涯有病率は0.2パーセントから1.6パーセントとされます。

根治は困難とされ、再発を繰り返すことが多いといわれます。反復うつ病いわゆるハイで、エネルギーが高まった状態である、躁状態と、落ち

込み、エネルギーが低下した状態である、うつ状態を繰り返すのがそううつ病であるのに対し、反復うつ病はうつ病を繰り返し生じる場合を言います。躁うつ病というのは、うつ状態と躁状態を交互に繰り返す状態です。

うつ病自体は、6パーセントから15パーセントといわれていますから、それと比べれば低めですが、決して珍しい疾患とはいえないでしょう。これは躁うつ病とは異なる疾患であると考えられています。単一エピソードうつ病単一エピソードうつ病は、再発しないうつ病です。

遺伝研究からは、反復性うつ病も躁うつ病も同一の疾患であるとされます。そのため生涯にわたって薬物投与による予防が求められることが多いのが実情です。



うつ病の分類については、症状自体から分類する方法として、アメリカの操作的診断基準DSMに基づき、その重症度から分類する方法と、うつ病の成因に着目し、心理的誘因が特定できるものとできないもので分類する方法があります。そのほか、うつ病の長期的経過に基づく第3の方法があります。


ソーシャル・スキル

国際連合の専門機関のひとつである、WHO(世界保健機関)では、社会技能を「日常生活のなかで出会うさまざまな問題や課題に、自分で、創造的でしかも効果ある対処のできる能力」と定義しています。イギリスでは、PDHE(人格的、社会的健康教育)と称される教科を設定し、このような能力の育成を図っています。

ソーシャル・スキルとは、社会のなかでごく普通に他人と交わり、生活していくのに必要な能力のことです。社会技能には次のような能力が含まれます。

心理社会的能力、ライフスキル、あるいは「生きる力」といわれることもあります。また、最近、イギリスの小中学校などで重視されているものとして、社会技能またはソーシャル・スキルの育成があります。

うつ病の治療としては、従来の電気けいれん療法や近年その効果が認められつつある薬物療法が主なものですが、そのほか、抑うつ気分の背景にある認知のゆがみを自覚し、合理的な認知を形成する、認知行動療法などがあります。

意思決定
問題解決能力
創造力豊かな思考
クリティカルに考えていく力
効果的なコミュニケーション
対人関係スキル - 自己開示、質問する能力、聴くこと
自己意識
共感性
情動への対処
ストレスへの対処

これらの能力が発揮された結果、以下の能力が可能となります:

(1)その場の雰囲気が分かる。
(2)自分の発した言動を相手がどのように受け取るか想像出来る。
(3)自分の考えを、上手に相手に伝える事が出来る。

季節性うつ病

患者の大部分は、冬以外の季節には正常な状態となることが多いのが特徴です。原因についてはまだはっきりとはわかっていませんが、脳にある小さな内分泌器である、松果体(しょうかたい)で作り出されるメラトニンというホルモンが、日照時間が短い冬に過剰となり、それがうつ病の症状を引き起こすといわれています。冬の寒い時期には誰でも、気分が滅入ってしまうものですが、高緯度地方に多く、冬季にうつ状態に陥るもので「季節性うつ病」があります。主に冬において、高緯度地域に発症率が高いのもそのためでしょう。

光療法といい、太陽光または人工光を浴びる治療法が勧められます。不眠治療として用いられるのです。そのほか薬品による治療法も存在します。メラトニンはアメリカでは栄養補助食品サプリメントとして、販売されており、安価で購入できます。

人におけるメラトニンの血中濃度は、昼に低く夜に高い、概日リズム(サーカディアン・リズム)を示し、睡眠と関連しています。季節性情動障害(きせつせいじょうどうしょうがい)で、主に冬期にのみ抑うつ的な気分に陥り、食欲の低下、不眠など、うつ病に似た症状が出ます。季節性気分障害、季節性感情障害などと呼ばれます。

季節性うつ病では、このメラトニンが過剰となることから過眠や過食の症状が現れることがあります。季節性うつ病は、日照時間の短いと発症すると考えられます。メラトニンは、暗いところで多く生産されることから、季節性うつ病に対しては、外出を増やし、日光に多く当たることが有効です。

抗うつ薬使用の注意点

副作用以外にも、抗うつ薬を用いる際に注意すべきことがいくつかあります。

古い世代の抗うつ薬である、三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬と比べ、新しい世代の抗うつ薬であるSSRIやSNRIでは、排尿困難や眠気といった副作用が軽減されてきたとはいえ、吐き気や性欲減退などの副作用があることは確かです。

●自殺の危険性

抗うつ薬、とりわけSSRIの処方を開始した直後に、未遂も含め、自殺のリスクが高まるという報告があります。なぜそうなるかは、いろいろな説があります。それまであまりにも重症で自殺の意欲すらなかった患者が自殺を図ろうという意欲をもってしまう、という説、あるいはSSRIが受容体のダウンレギュレーションを行うことから、処方を開始直後に一時的にうつ病の症状が悪化する、という説です。

●躁状態の惹起

うつ状態の患者に抗うつ薬を投薬すると、躁状態になるというものです。これは疫学上の反証はありますが経験的に知られています。

そのほか、抗うつ薬を服用すると気持ちが明るくなるということで、抗うつ薬を「ハッピードラッグ」として服用する例が近年、増加しています。前向きに生きる姿勢を促すことを目的としてのことでしょうが、抗うつ薬の作用は非常に複雑であり、深刻な副作用をもたらすこともあります。安易な服用は脳の機能に変調をもたらす危険もあります。必ず、専門医の判断に基づいた処方が必要です。

うつ病の治療、特に内因性うつ病の場合は、その重症度にかかわらず投薬治療が行われるのが一般的ですが、抗うつ薬を用いない治療法もあります。軽症の場合などは特に、カウンセリングといった精神療法のみが用いられることもあります。

自尊心

プライド(pride)は、肯定的な意味で使われないことが多く、キリスト教においても人間を罪に導く可能性があるとみなされる欲望や感情をあげた、「7つの大罪」とされています。また日本語におけるプライドとは、自惚れや傲慢さを意味することがあり、自尊心とは区別する必要があります。また、自尊心の欠如は、自制心(セルフ・コントロール)の喪失を招き、アルコールや薬物に対する依存症や、過食症・拒食症などの摂食障害といった精神障害を招くこともあります。ただし、うつ病の治療においては過度の励ましは自尊心の快復でなく、単なるプレッシャーを与えるだけにならないよう注意することが大切です。

self-esteemという訳語があてられることが多いです。そのため自分の能力に対してさえ懐疑的になってしまい、主体性や自信を形成することができず、何もできなくなってしまいます。うつ病の患者は、自尊心を失っていることが多いという考えから、欧米のうつ病治療では薬物療法と並行して、カウンセリングによる患者の自尊心の快復が行われるのが一般的です。

精神医学的な意味での自尊心とは、ありのままの自分を受け入れ、誇りをもつということです。自己肯定感は人格形成や情緒の安定に重要であると考えられます。プレッシャーは、事態をますます悪化させる恐れがあるからです。

自尊心、および自尊感情というのは、自己の存在やあり方を大切に思う感情をいいます。自尊心のない者は自分を信用することができませ。プライドや傲慢、驕り、および自惚れとは異なるものです。

音楽療法

治療力はなく、いくつかの補完療法のように、重大疾患の治療法として勧められることもない。しかし、優れた補完医療法の例にもれず、幸福感や生活の質を高め、症状を軽減し、初期治療やリハビリテーションの効果を高めてくれる」(『代替医療ガイドブック』春秋社p402)と述べています。音楽療法の歴史は古く、創成期においては宗教と同時に生じ、儀式や呪術に用いられました。

うつ病の治療法としては、電気けいれん療法や薬物療法、認知行動療法が主体となりますが、そのほかにも、実験的段階であるものや、限定的に行われるものとして、睡眠を断つ「断眠療法」や強い光を浴びる「光療法」、運動によるストレス発散を目指す「運動療法」および、音楽を聴いたり演奏したりすることによる効果を応用する「音楽療法」があります。音楽療法は、音楽の生理的・心理的・社会的効果を応用することで心身の健康を快復させ、さらに向上を目指すという医療行為ととらえる立場がある一方で、「現代西洋医学領域において、科学的未検証および臨床未応用の医学・医療体系の総称」として定義される、「代替医療」、あるいは「補完医療」とする立場もあります。ただし、バリー・キャシレスは、「音楽療法は立証済みの補完療法であり、多くの病状や問題に効果を上げている。

日本音楽療法学認定の音楽療法士という資格もあります。うつ病に対する治療効果も古くから認められており、旧約聖書「サムエル記」には、ダビデはサウルのうつ病を竪琴で治したという記述があります。

現在は、高齢者ケアや引きこもり児童のケアに用いられます。人の精神を鼓舞し、トランス状態を引き起こします。